2012年4月22日日曜日

(別添4)スライド資料解説:「与えられた道を選ぶより選びとる人生を」-好きで好きでたまらない仕事を見つけるために-:文部科学省


アフラック創業者・最高顧問
大竹 美喜

はじめに

スライド資料1 生産性新聞

 アフラックの大竹でございます。私は2005年から経済産業省の「キャリア教育民間コーディネータ育成・評価委員長」を務めておりましたことから、本日お話させていただくことになりました。
 アフラックにつきましては、「青いダックとねこ」のCMで皆様ご存じかと思います。私のプロフィールにつきましてお手元の資料をご参照いただければと存じます。
 私は38年前「がん保険」を日本に紹介するためアフラックを創業。その後、11年間副社長、9年間社長、8年間会長を務め、その後9年間最高顧問という立場で、アフラックの経営にアドバイスをしております。
 私はアフラックの経営を通じ最も重要視したことは「人間力」を養うことでした。創業から現在でも、私が社内・外で一貫して強調し続けているのは、人の 成長・育成には「人間力」を磨く以外にないということです。そのため、人材育成についてこれまで注力してまいりました。
 今回、文部科学省、経済産業省、厚生労働省が合同で本シンポジウムを開催されることを伺い、国が本腰を入れてキャリア教育を推進することとなり嬉しく存じます。

 本日は皆様にお伝えしたいことが多くございますので、ご参考までに資料を用意いたしておりますので、後ほどお目通しいただければ幸いです。

 

結論

スライド資料2 結論

 今再び、日本、日本人の素養を磨き、人づくりをすることが、世界に誇れる日本に戻る要件であると思います。何故なら、「人づくりは国づくり」であるからです。

 私が特別顧問を務めております広島大学の3年生がアメリカに留学し、苦労しているということを私に報告してきました。そこで私は、その苦労、挫折が強い人間力を生み出している。「与えられた道よりも、選びとった道」がいかに素晴らしいことか、将来必ず確認できる日が訪れます。とエールを贈りました。
 自分で選びとる人生を歩むために、欠かせないのが「自分探し」です。自分探しができたとき、本当に好きで好きでたまらない仕事・天職に巡り合えるのです。

 それには子供たちが自ら自分の人生を選べるよう、家庭、学校、社会が導き、手本を示すことです。私は中でも、現在は家庭教育が担う役割が重要になっているのではないかと思います。
 現在のキャリア教育の中で欠けているものを、家庭、地域が一体となって養い、学校教育で後押しをする。親になったとき、親の教育を行う。何故なら、子供は親の背中を見て育つのですから。そこで自立できるよう指導し、自立を促すキャリア教育を行うことが必要なのではないでしょうか。

 

職業観

 私は昭和14年生まれで今年73歳になります。広島で生まれましたので、6歳のとき、原爆、そして終戦を体験しました。
 私は、これまで日本人が培ってきた高い倫理観、勤労意欲、教育水準、忍耐力を持つ信頼される人間になれということを、社会(家庭、近所)、そして学校から学びました。
 何故なら、天然資源の乏しい国であるからこそ、人を資源と考え磨いてきた。事実、戦後の高度成長時代を創り出し、世界に誇れる日本となったのです。

 戦中・戦後の貧しい時代を経験すると、若者には働こうという意欲が自然と溢れてきます。働くことの苦労は楽しみとは正反対かもしれませんが、自分あるいは家族に対する責任という意識が自然と生活を通じて出てくるのです。しかし、飽食を迎えた今は、そうした意欲、責任が乏しくなっているのではないかと感じます。

 そう考えるとやはり私は、問題は教育であるということに行き着くのです。学校教育だけでない、子供の頃から家庭教育を含めて考える必要があると。
 人づくりが国づくりであると思うからです。


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 戦後、家庭でも、社会でも一流大学に入り、大企業で働くことがエリートであり、安定した生活を送れると信じ一直線に進んできた。そのため、一流大学に入ることが子供にとって最大の目的となり、大学に入った途端、目標を失ってしまう。また、企業も学歴主義の採用を行ってきたことが、加速をかけてしまったという反省があります。
 また、その後のゆとり教育では、競争心や自ら勝ち取るという意識が薄れてしまったように感じます。
 私たちの年代は自責の念で一杯です。高度成長が持続できると努力を怠っていたのです。

 長い人生を考えた場合、バランスのとれた教育が必要となります。特に大学生は単位習得だけが目的ではありません。自分で真剣に好きな分野を選び(大学選びではない)好きな職業を(会社選びではない)選ぶこと。大学でも会社選びでもなく、その選んだものが人生を賭けて傾注できる好きな仕事となるのです。
 また少子化を迎え、いまや殆どの人が選ばなければ大学に入れる時代となりましたが、日本経済の停滞、さらにはアジアを中心としたグローバルな人材獲得により、大学生の就職率の低下が問題となっています。
 そこには、中小企業の募集があっても大企業にしか応募をしない学生と。企業と学生の間にミスマッチがあると言われています。

 今、必要となるのは、企業の大きさやブランドではなく、自分の与えられた使命を見出し、社会にどんな貢献ができるのかを見つけることです。それには「自分探し」しかありません。自分がみいだせれば自然と自分の人生を選択できるのです。
 そのためには、幼いころからそのように教育していくことが必要でしょう。ですから私は特に家庭教育の担う役割は大きいと考えているのです。

 

「働くということ」

スライド資料3 仕事で・・本

スライド資料4 働くとは・本

 ニート、フリーターが多くなった当時、経済産業省の方から依頼され、『仕事で本当に大切にしたいこと、一自分を大きく伸ばすために』を上梓させていただきました。これは本当に自分の好きな仕事を見つけていただきたいという思いからであります。 20年前、バブル崩壊後に生まれた人々は、経済成長を体験しておらず「現状維持是即落伍」。新聞、読書、テレビも観なくインターネットばかりに頼り、正確に日本、世界の動きを把握していない。

 最近の、特に、私共は大学生の職業観に対し危惧を抱いており、経済界、教育関係者の7名がr働くということ」(仮題)をテーマにし語った書籍を3月下旬に刊行いたしますので是非ご一読いただければと存じます。

 私ども経済界としては、このような職業観について提起させていただいておりますが、家庭、そして教育現場では是非とも他人から教わる教育から、自分自身で取り組む学習へと考え方を切り替えていただきたいと思います。
 学習は自分で(自発的)にするものであり「必要は学習の母」であります。

 

好きで好きでたまらない仕事を見つける

● 米国

  米国は独立戦争以降、自己責任が原則となり、文化として定着しています。そのため子供の頃から自立心を徹底して育ててきています。

例:米国アフラック本社CEOの娘さんは、アトランタで古着屋の商売をやっています。
 NY証券取引所、東証に上場している企業の社長令嬢であっても親の七光りは頼りにせず、自分の道を歩んでいるのです。
日本は家庭で甘やかし、家庭が社会の中心となっている。米国では親は子供に対し、「あなたの考えを聞きたい」と自分で考え、行動することを教育しているのです。

●日本

スライド資料5 未来塾・創造性の未来塾

 ご紹介するお二人は、私が名誉塾長を務めております高校生のための次世代リーダー養成塾「きらめき未来塾」の講i師として(三木谷さんは2005年のみ)講義を担当いただいており、毎年、人気講義の一つとなっております。
 日本は経済成長とコスト削減は同時に進行しなくてはなりません。政治決断が必要です。そのためには新たなイノベーションが不可欠です。


なぜ床に猫の糞を行う

・楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史さん

 日本でも大企業を飛び出し活躍されているのが、皆さんご存じの楽天の三木谷さんです。
 私もよく存じあげているのですが、日本興業銀行(囲みずほ銀行)という大企業を飛び出し、イノベーションを興し、ニュービジネスとして楽天を創業された。
 しかし、あとに続く人が出てこないことを残念に思っているのです。何故なら多くの人は、三木谷さんだからできた。と特別黙し、動こうとしないのです。
 日本はチャレンジする環境を与え、若者のリスクのとれる社会、好循環社会とすることが不可欠です。

・朝原宣治さん

 北京オリンピック400mリレーで男子トラック競技日本初の銅メダリストとなった朝原さん。いくつになってもあきらめない、自分の道をとことん追求し、そしてその結果がメダルとなったと私は思っております。
 その朝原さんが、先日(2012年1月5日の日本経済新聞朝刊 C世代駆ける一の記事で、人が育つための「環境」の大切さを再認識する必要があると言っております。
 「もう一歩」促す社会。これこそが社会と一体となったキャリア教育であると思います。

 私自身、次世代のリーダー育成の必要性を感じ、中学生、高校生、社会人のためのリーダー養成塾を開催し、リーダー育成に微力ですが、注力しております。

 キャリア教育とは、自立に必要な力の基盤を育てることですが、自分の夢のみの実現を目的とするのではなく、「自分は地域社会や企業にどのような夢を与えられるか」地域との双方向、そして協同で実体験型学習をする。そして価値を消費する人から価値を生み出す人を育成するものであると思います。

 

・ 『人間力大賞大年鑑』の紹介

スライド資料6 年鑑内容

スライド資料7年鑑ちらし

 私は、公益社団法人日本青年会議所の「人間力大賞」の審査委員長を15年間に亘り仰せつかっているのですが、この賞の25周年を記念し、『人間力大賞大年鑑』を2月に発行する予定となっております。
 日本全国の40歳以下の光輝く若者を発掘し、表彰した皆さんのその後の活躍をまとめたものです。私自身、受賞された人々が、全世界、日本各地で実践している姿に長年学ばせていただいております。
 この年鑑は、公立の図書館等に納める予定となっておりますので、ご興味のある方はご覧いただきたいと思います。

 このように、日本にも素晴らしい人材がいますので、いかに社会で育てあげるかだと思います。
 また、日本青年会議所や様々なNPOの団体と連携を強化し、カリキュラムの開発、キャリアを磨く場の提供をしてもらうことで一体化したプログラムができ、地域の活性化にもつながるものと思います。

 最近では、高校や大学で人材教育、キャリア教育に力を注ぐようになってきていますが、まだ不十分であると感じております。職業と教育、職業人教育をさらに一段と強化し、就業や育成支援をすべきであると思います。
 このことは、欧米各国から学ぶべき点も多いと思います。そこで英国の事例をご紹介したいと思います。

 

●欧州

スライド資料8 Apprenticeship

 欧米では、古くからキャリア教育はシステムとして形成されています。
 英国のApprenticeshipの起源は1563年に遡り、現在に至るまで、ニーズの変化とともにシステム、プログラムを改良し、キャリア形成を援助しています。
 日本では職業訓練校がありますがApprenticeshipは、日本語では「見習い」といった言葉が翻訳として近いのですが、制度としてはインターンシップに近いものであるとご理解いただければと思います。
 アフラックでも大学生のインターンを受け入れておりますが、受け入れが可能なのは大学生に限られております。

 このapprenticeshipはFT指数100/250の企業と公共、民間の中小企業が組織し、ネットワーク化し、ほぼすべての事業体をカバーし200以上に及ぶプログラムが用意されています。英国政府は、国による職業訓練費を削減しながらも訓練を維持させるためにApprenticeship制度を資金面でバックアップしています。


誰かが落ちたときに笑って

 英国に在住の16歳以上でフルタイムの就学をしていない人。また、就職している人でも資格取得のために学ぶことができます。

 英国では、このように政府、産業界、労働組合が協力しApprenticeship ネットワークを形成しキャリア教育を推進していますが、近年人材の国際競争力の低下がみられることから、Apprenticeshipへの参加率を高めることで若者の材育成に力を入れています。

 欧州では、ドイツのマイスター制度をはじめ、このように手に職を付けるという制度が確立されています。
 先ほど、三木谷さんに続く人がいないのは残念と申しましたが、欧米先進国ばかりではなく、中国、韓国でも若者は逞しく育成されています。

 

求められる人材 一問題解決能力のある人物

 今、どの世界、分野でも求められる人材は問題解決能力のある人材です。問題を解決したという経験は大きな財産となります。何故なら問題を解決し、危機に対処するという経験は、私たちに最も大切な成長の機i会を与えてくれるからです。もちろん、脅威や喪失、挑戦的な課題に目を奪われることから、はじめはそれほど大きな機会だとは思えません。ですが、失敗を重ねたからこそ余計に大きな成長の機会に、そして財産となるのです。
 「危険」と「機i会」という漢字を組み合わせると「危機」という文字になり、医学用語で危機(クライシス)といえば、重病が急激に悪くなるか快くなるかの別れ道。ターニングポイントをさします。
 つまり、どんな問題でも、どんな逆境でも、苦痛と喪失の可能性とともに、チャ� ��スと成功や成果の種を秘めているということなのです。どんな逆境からもなんらかの実りが必ず生ずるのです。ですから、子供たちには、失敗を恐れず挑戦していただきたいと思います。また、そのように、周囲の皆さんは後押ししていただきたいと思います。

 

スライド資料9チャーチル

スライド資料10 チャーチル

 人はとかく、修羅場に身を置かないとその真実はわかり得ません。昨年の3月11日の東日本大震災で親を失い、家を失った若者は目的意識が芽生えた。医師になる。建築士になると。
 これはまさに、チャーチルがリーダーシップを学んだことと同じように思います。
 チャーチルは英国の大政治家でノーベル文学賞も受賞した偉大な人物ですが、子供の頃は学校の成績も悪く薄弱で病気がちで、言語障害もあったという。しかし戦争の体験から少しずつリーダーシップを発揮するようになってきた。
 ドイツ軍にめっためったにやられている時に、イギリスの将校、リーダーは逃げ出したが兵隊は頑張った。その時チャーチルは初めてわかったのです。リーダーが先頭に立って頑張らなければイギリスはもたないと。そこで� ��意したことが「Never Give In」(諦めてはいけない・降伏するな)ということです。以降、チャーチルは世界のリーダーとして今でも一番尊敬されています。

 私自身、アフラックの創業をはじめ、どんなに困難な辛い経験でも振り返ったときに、「確かに苦しかったが良い経験をした。どんなに苦しくても私は耐えたし、大切なことを学んだ。逆境に耐えて困難が去るまで頑張り抜いた。」と思えることが今を迎えていると信じています。

 

真の「実」のある人になれ

 グローバル化の波は、激しい過当競争で生き残れる人材が求められます。私は38年前から挑戦してきたから今日があるのです。
 何でもありの世の中だからこそ、何でもできる。そしてグローバル化はフラット化された社会へと向かっていくと思われます。
 そういう社会では、学歴や職歴が人の価値を決定するのではなく、真に実力のある人。実績を出せる人が、真に価値のある人として評価されるのです。
 具体的には、ある事態に直面したとき、沢山の情報の中から的確な判断を下し、最良の選択ができるような人材です。
 私は「実力」「実績」「実質」の3つの「実」。実力を持っているか。実績を作ったことがあるか。肩書きや権威でない実質で生きているかを判断基準としています。

 


夢を実現させるために

 こうした時代を迎え、さらには欧米人や中国人、韓国の若者と肩をならべ切磋琢磨するには独立した個を磨きあげ「個を確立」することです。
 将来こうありたいと、心の中で「最高の未来」をリハーサルするのです。私自身も小学生の頃から、通学の往復のとき20歳になったらどうしょうと。。。
 私は今でも「今日という日は人生の中で最も大切だぞ」と毎朝30回唱えて一日をスタートしています。

 

まとめ

 自分の人生、未来、可能性、成長を決めるのは自分自身です。自分にとって何が現実的かを決めるのも自分自身です。自分の可能性や現実を決めようとする他人の判断を鵜呑みにしてはなりません。
 自分を判断するのは自分自身で、トライ・アンド・エラー、特に失敗があってこそ多くのことを学ぶことができる。そして、失敗に屈することなく、次なる高い目標を掲げることで、自分の道を選ぶことができるのです。
 不透明な時代だからこそリスクを恐れず、リスクを取ることに対して、多いにリスクテーキングしろ!新しいことにチャレンジする精神(自己投資)は、必ずや将来の自分の志になるのです。

 ですから日本の次世代を担うみなさんには、国際感覚を持ちながら座標軸をしっかり持って失敗を恐れず、夢を持ち、夢の実現に向けて頑張っていただきたいと思います。皆さんのご活躍に期待いたしております。
 また、指導に当たられている皆さんには、是非ともその後押しをしていただきたいと思います。それには子供たちのみならず、皆さん自身も自分探しをして、本当に好きな道を選んでいただきたいと思います。

 ヨーロッパ、アメリカのエリート教育などを見ていましても、そこが非常にしっかりしているように思います。宗教や文化や、いろんな違いがあろうかと思いますが、それを乗り越えて、プラットホームをつくり、そこで共通言語を開発して磨き上げていく、そういったことが今、ものすごく必要ではないかなと思います。
 皆さんが持っているいろいろな価値観を、毎日の生活やコミュニティーの生活に当てはめるよう努力することが、真の教育になるものと存じます。

 

スライド資料11長城郡の本

スライド資料12 植林

スライド資料13 工業倶楽部会報

 また、私たち経済界ではリーダーを養成するための「場」の提供をこれからもしてまいりたいと思います。

 そこで最後にご紹介させていただきたい言葉は

「地域を変えられるのは人である。人を変えられるのは教育である」

 この言葉は、韓国の人口5万人の韓国の長城郡という小さな村の地方自治を成功させた金興植(キム・ウンシュク)郡守の信条です。

 この地方自治改革の成功例が本書となり、当時の大統領 盧泰愚(ノ・テウ)氏が公務員の必読書であるとし、ベストセラーとなった『株式会社 長城郡』です。

 この信条のベースには松下幸之助の「人づくり」の思想が根付いているといいます。

 つまり、「人づくりは国づくり」に通じるということです。私はこの韓国、長城郡から教育は植林と同じであり、長い年月を要するということを学びました。
 ですから、日本国の将来のためにも、キャリア教育を推進し、優秀な人材を育成、輩出しなければなりません。それが私たち経済界、そして先輩としての責務であると思いますので、本日ここにお集まりの皆さんを中心に推進していただければと存じます。



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