ジャンプスクエア マンガ家 直撃インタビュー[モノガタリ]
ジャンプスクエア マンガ家 直撃インタビュー[モノガタリ]
――『はにめろ。』は、ふるかわ先生の初めての少年漫画ですね。これまではずっと少女誌でご活躍されてきましたが、少年誌で描くということが決まった時はどんなお気持ちでしたか。
●ふるかわ ずっと夢だったんです。少年誌……「ジャンプ」で描くことが。「ジャンプ」を読んで育ってきたようなものでしたから。同じ集英社の雑誌で描いていたとはいっても、一生「ジャンプ」には縁がないだろうなと思っていたので、「ジャンプSQ.」で読み切りを描くチャンスをいただいた時には、本当に嬉しかったです!
――夢だった少年漫画を実際描いてみて、いかがですか。
●ふるかわ すごく楽しいです!!『はにめろ。』の読み切りを描いた時は、まだ(「別冊マーガレット」の)『ファイブ』を連載しながら1か月だけお休みをいただいて描いたのですが、60ページの作画が奇跡的に30ページのときと同じ日数でできたんですよ。
――えっ!単純に言うと半分の時間で描けたということですよね。
●ふるかわ はい。もう寝るのが惜しいぐらい、描くのが楽しかったので……1日を2日に分けて過ごしていましたね。
――1日を2日に分けるというと……。
●ふるかわ 12時間で24時間分の生活をするという感じでしょうか。使う時間を半分にする……例えば1日に6時間寝ているとしたら3時間にする。だから、30ページでかかる時間で60ページ分ができたんだと思います。
――倍速で生活する、みたいなことですね。すごいです!!少年誌で描くにあたって特に意識したことはありますか。
男性は自分の尻を考え出すことができ●ふるかわ やっぱり情報量を多くすることですね。背景を描き込む量を増やしました。女の子の視点と男の子の視点は違う、ということを担当さんに教えていただいて。はっきりと、どこで何をしているかがわかる状態の画面づくりを心がけています。あとはペンタッチですね。線の強弱はしっかりつけるように意識しています。
――意識しないと、うっかり少女漫画のようなタッチになることもあるんですか。
●ふるかわ そうですね。少女漫画の絵は繊細で、線も細ければ細いほどいいっていうイメージがずっとあって、太くするのがちょっと怖かったんですよ。今見ると読み切りの『はにめろ。』ではまだまだ細いですね。連載になってからのほうが太いというか、強弱がつけられているかなと思います。
打ち合わせ中、トイレで急展開!?
――読み切りで手応えを得て、スムーズに連載に移行された感じでしょうか。
●ふるかわ いえいえ(笑)。まだ連載できるかわからない状態で『はにめろ。』の連載用ネームを切っていた時は本当に大変でした。最初に2話分のネームを担当さんに見せたんですけど、全ボツで。でもその時点で編集部の方たちで連載を決める会議の日まで、あと1週間ぐらいしかなかったんですよ。すごく焦って、編集部に何度も通って、担当さんと話しながら直していきました。
――どうして全ボツになったのだと思いますか。
●ふるかわ やっぱりゆるかったんじゃないかなと。
――ゆるかった、ですか。
ここで、iは、女の子の排尿の画像を見ることができます●ふるかわ 今のネームと比べたら、ゆるかったですね。それまで、読み切りをベースに連載用の作品を作るという形をとったことがなかったんですよ。だから、読み切りとの違いをどう出せばいいのかがわからなくて…。自分でこれくらい変えればいいのかな、と思っていたラインを「もっと超えてほしい」と言われました。難しかったですね。
――どうやって克服されたんですか。
●ふるかわ 担当さんと何度もこんなパターンはどうか、あんなパターンはどうかと話し合いました。直接ストーリーにつながらないような話でもどんどん話していくうちに、「あ、ここなんじゃない?」っていうところでつながったりするんですよ。そういえばトイレで……ね(笑)。
●担当 そうですよね、トイレから出てきたら……。
●ふるかわ 「こんなんどうですか!」って急に私が言い出して(笑)。それでいこう!って展開が決まったことがありました。
――トイレの中で何かあったんですね(笑)。
●ふるかわ 手を洗ってる時、急にアイデアが浮かんで。とりあえず言ってみよう、と。
――ちなみに、それはストーリーのどの部分だったんですか。
●ふるかわ 円が蜜丸のアシスタントになるという展開です。
――ものすごく大きな部分ですね!読み切りでは、円は蜜丸が大好きな漫画家本人であることは知らないままでした。
●ふるかわ 二人が秘密を共有することによって、もっと、エロいことができるんじゃないの?っていう可能性が出たと思います。
当り前のことなんて何もないんです
上部と漏らしやサイト――読み切りから連載になって、本当にパワーアップしていますよね。円のキャラも濃くなっていますし……そんなご苦労があってのことだったんですね。
●ふるかわ いやあ、いっぱいいっぱいでした。なんとか会議に間に合うようにネームが完成した後も色々大変で。会議の後、連載できるかどうかの結果を待っている1週間が本当につらかった……。そして、今日結果がわかる、という日の午前中、ついに耐えられなくなって部屋で1人で思いっきり泣いたんですよ。もともとその日は、手・赤塚賞パーティに呼んで頂いていたのですが、連載が決まらなかったらどんな顔していけばいいんだろうって思っていました。もう泣いて目もはれちゃったし、結果がどちらでも、パーティには行けないなと。とりあえずお風呂に入って、出てきたところで担当さんから電話があったんです。寒い時期だったんですけど、あわてて全裸で電話をとったら「『はにめろ。』の連載が決まりました 」って言われまして……洗面所に座りこんで「ありがとうございます、ありがとうございます」って全裸で言いました(笑)。
――全裸で(笑)。結局パーティーには行かれたんですか。
●ふるかわ 行きました。会場で最初に「SQ.」の、直接の担当ではない編集者の方にお会いしたら、「連載決定おめでとうございます」って言ってくださったんですよ。それがすっごくうれしくて。改めて編集部の方たちも知ってくださっていたんだなあって。「これからよろしくお願いします」という気持ちになりました。
――そんなドラマがあったんですね……。会議の結果を待っている間に泣いたというのは、プレッシャーで、ですか?
●ふるかわ プレッシャーですね。プラスの方向になんて考えられませんでした。
――もう少女漫画のほうで大ヒットを飛ばしていらっしゃるのに、そこまでナーバスになっていたというのは驚きです。
●ふるかわ いつでもどきどきしますよ。今まで何をしてきたとしても、決まっていることなんて何もないと思っています。自信もないですし。逆に、守るものも何もないですしね。いつも、自分が今出せるものをどれだけ紙に残せるかだと思っています。だからコミックスが出ることも、グッズを作っていただけることも、カラーページをいただけることも、ひとつひとつが嬉しくて。当り前のことなんてないんですよね。震災があったときも、それを強く思いました。カラー原稿が完成していたんですけど、インクも紙もどうなるかわからない状況で。掲載されるのは当り前のことじゃないんだな、見ていただけることはすごくありがたくて、それが一番なんだなとあらためて思いました。
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